チャーリー横山の健幸塾「風見どり」! 健康な身体と心そして幸せを手に入れるためのお手伝いができれば幸いです ...

健康な身体と心そして幸せをあなたに贈る健幸塾「風見どり」
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セラピードッグについて!
我が家のウェンディとレモン
庭先で、今日も妻と達也の帰りを待っている我が家のウェンディとレモン

セラピードッグ(治療犬)とは、触れ合いや交流を通じて、人の不安を減らし気力を高め、心と体を癒す働きをする特別な訓練を受けたワンちゃんたちのことです。
しかし、正式にセラピードッグの訓練を受けているワンちゃんでなくとも、私たちが愛情を持って接していれば、訓練されているセラピードッグに負けず劣らず、私たちを癒してくれます。

我が家のワンちゃん(ウェンディ・レモン・ルビー)たちも、妻に愛され妻を愛していました!
妻がトレイに行けば、ついていき、妻が安全に用をたし、それを確認するまでは離れません!
寝る時も、妻のふとんの上に横たわり夜が明けるまで見守ってくれます!
妻が亡くなる最後の時も、ずっと傍に居てくれました!
そして、妻が亡くなった後も葬儀でこの家を離れるまで、傍で妻を守ってくれていました!

妻が乳癌・腎臓癌の摘出手術を終えた後、苦しい抗がん剤治療が再開されましたが、そんな時に妻は「仔犬が飼いたい!」と申し出ました。
私は「こんな大変な時に、世話できないだろう!」と諦めるよう話しましたが、妻は「どうしても!」と言い、仔犬を飼うことになりました。
しかも、縁あって2頭の仔犬を同時に飼うことになりました。それがルビーとレモンです。
ルビーとレモン
庭先でが撮影した子供の頃のルビーとレモン

ウェンディ
お庭でルビーとレモンのお守をするウェンディ

妻は抗がん剤の副作用で食事はほとんど摂ることができず、水さえも下を刺し飲むことができませんでした。そして続く「嘔吐」に体力も失われていきました。 しかし、仔犬が我が家に来てからは、妻は「わが子のように」一生懸命育ててくれました。
そして、妻の体力はみるみる回復していき、職場に復帰できるまでになりました。
仔犬たちが妻に「生きる力」を与えててくれたようです、、、

また、これは後から聞いた話ですが、妻が仔犬を飼おうと決心した理由に「私が亡くなくなった後、主人や子供たちが寂しくないように!」というのもあったようでした。

そう、妻が亡くなった今、この仔たちは私達の大きな支えとなっています。私に生きる勇気希望を与えてくれています。


 今ご病気の方、またはそのご家族の方、もし可能であればぜひワンちゃんと暮らされること
 をお勧めいたします。
 ワンちゃんたちの「無償の愛」が、きっと私たちを本当の幸せへと導いてくれるでしょう!



妻は私にこう云った「この仔たちを守るためなら、私は命を惜しまずこの身を投げ出すだろう!」そんな妻も今はいない!この仔達の身代わりになることのできない遠い世界へと旅立ってしまった!妻のようにこの仔達の身代わりになる勇気が私にあるだろうか?でも、このことだけは私にもはっきりわかる!私が危険にさらされた時、この仔たちは自らの命を顧みず、その身を投げ出すだろう!
ルビー・レモン・ウェンディ
今や大人となり、我が家を守ってくれているルビー・レモンそしてウェンディです!


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Dog Is A God(神なる犬)

この世に生を授かり、しばらく私達と時を伴にし、そして去っていく天使達!
私達に喜びと悲しみを与え、そしてこの世を去っていきます。
まるで私達に何かを伝えるためにやって来たかのように!
それは私達が幸せを手に入れるための方法なのかも知れません ...
太くたくましい足でしっかりと大地を捉え、白く美しい飾り毛を胸に頭を高く揚げ、
夕日を背に黄金色にきらめくコートを風になびかせ遠くを眺める容姿!
なんと優美な光景でしょうか!
その光景を目にするとき、私達は確信するでしょう。
彼らが神より賜えし贈り物であることを!
遠い昔、彼らに Dog と名付けた人達はそのことを知っていたのでしょうか?
そして、そのことに気付かずにいる私達に知る術を残してくれたのでしょうか?
なぜなら Dog (犬) を後ろから読むと God (神) になるからです ...
彼らが力尽きこの大地に身をゆだね、私達の元を去っていくとき
私達の傍に居てくれた彼らに感謝し、彼らの耳元で私はそっとやさしく囁くでしょう!
”ありがとう!” そして "I Love You!” と ...

by Charlie Yokoyama
我が家のシェルティの画像
目次!

No Charge For Love
NoChargeForLove
ある農夫が何匹かの仔犬を売らなければならなくなり、「4匹の仔犬売ります」との広告を庭先のポストに取り付けようとしていました。 農夫が最後の釘を打ち付けようとした時、オーバーオールの肩紐を誰かが引っ張るのを感じました。 見下ろすと、そこには一人の少年が立っていました。

「おじさん!、おじさんの仔犬を1匹買いたいんだけど」と少年は言いました。
農夫は首の後ろの汗を拭いながら「この仔たちの血統はすごくいいんだ、安くは譲れないよ!」と言いました。
少年はしばらくうなだれていましたが、ポケットの奥に手を突っ込み手のひらいっぱいの小銭を農夫に差し出して言いました。

「39セントしかないんだけど、これで仔犬たちを見せてもらえるかな?」
「 "Sure!" いいとも!」農夫はそう答えて口笛を鳴らし「ドリー、おいで!」と母犬を呼びました。
そうすると、犬小屋からドリーが出てきて、その後をつけて柔毛な4匹の仔犬が坂を下ってきました。
少年はフェンスに顔を押し付け、嬉しそうに瞳を躍らせました。

そして、その仔犬たちがフェンスに近づいてきた時、何かが犬小屋の中で動いていることに少年は気がつきました。 ゆっくりともう一匹の仔犬が出てきたのです。 その仔は他の仔犬たちよりもあきらかに小さく、何やら様子が違いました。
坂をころげてやってきたこの仔犬は、足をひきずりながら他の走りまわる仔犬たちに追いつこうと一生懸命でした。

すると「あの仔犬が欲しい!」、少年はその小さな仔犬を指差して言いました。
農夫は少年の傍にひざをついて「ぼうや、君の欲しいのはあんな仔犬じゃないだろう!あの仔は他の仔犬のようにぼうやと走ったり遊んだりできないんだよ。」と言いました。
少年はフェンスから一歩下がると、ズボンに手を伸ばし裾をまくり上げました。 少年の足の両側に沿って金具が添えてあり、特製の靴に固定されているのが見えました。 少年は振り返り言いました「わかるでしょう、おじさん!僕も一人でうまく走れないんだ。あの仔にはあの仔をわかってやれる誰かが傍にいてあげなくちゃね!」

農夫は涙を浮かべながら、その小さな仔犬に手を伸ばし抱き上げました。
そして、その仔犬をそっと少年に手渡しました。
「おじさん、いくらなの?」と少年が尋ねると「 "No Charge!" お金はいらないよ!」と農夫は答えました。
「ぼうや、愛に値段はつけれないよ!」

"There's no charge for love!"

作者/Unknown
翻訳/チャーリー横山


The Last Battle
TheLastBattle
老い果ててゆくことが定だとしたら、
痛みが眠りへの道を閉ざしているのだとしたら、
勝つことのできないこの「最後の戦い」の時、最善を尽くしてください。

あなたが悲しむことはわかっています。
でも悲しまないで、あなたの手を私から離さないでください。
愛と友情の試練は、あなたと過ごした多くの日々よりもこの日のためにあったのでしょうか!

あなたと過ごした数々の幸せな日々、もう何も恐れるものはありません。
あなたは私に辛い思いをさせたくないと思ってくれていますね!
でもその時が来たのなら、どうか私を行かせてください。

私が向かうべき所へ連れていってください。
そして最期まで私の傍に居てください。
私の目が見えなくなるまで強く抱きしめて話しをしてください、、、

とうとうその時がやって来たようです。
あなたのやさしさを感じています。
あなたのやさしさに応えたいけれど、最後に尾を一振りすることしかもうできません。
私の思いを伝えたくて、痛みと苦しみの中この最後の一振りのために力を残していました。

私達はいつも一緒に居ましたね!
どうか私が去りゆくことを悲しまないでください。
どうかあなたの心に涙を流させないでください。

どうか微笑んでください。
私達が伴に歩んだひとときを思い出して、、、

作者/Unknown
翻訳/チャーリー横山


To My Beloved Master
ToMyBelovedMaster
昨日の夜、私はあなたのベッドの傍に立って居ました。
あなたのことを一目見たくて!
あなたが泣いているのがわかりました。
なかなか眠れなかったのすね!

あなたが涙を拭っていたので、私はそっと「クンクン」と鼻を鳴らしました。
「僕だよ、僕はあなたを置いて行ったりしていないよ!」
「僕は大丈夫、元気だよ!」
「ほら、僕はここに居るよ!」

朝食の時、私はあなたのすぐ傍に居ました。
あなたがお茶を注いでいるのが見えました。
何度も物思いにふけっていましたね!
そして、あなたの手がふと私に触れるのを感じました。

今日あなたが家路へと向かう時、私も一緒に居ました。
お家のカギを探していましたね!
私はそっとあなたに手を掛け「僕だよ!」って微笑みながら言いました。

今日お墓参りの時、あなたと一緒に居ました。
お墓の手入れをしてくれていましたね!
でも「僕はもうそこにいないよ!」とあなたを安心させてあげたかったのですが、、、

今晩はとても疲れているようですね!
椅子に深く沈みこんでいましたね!
あなたの傍に立っていることを一所懸命伝えようとしたのですが、、、

あなたは静かに座り、そして微笑んでいましたね!
夕刻の静寂の中、私があなたのすぐ傍に居ることに気付いてくれたのですね、、、

短い別れの時を終え、あなたにもその時がやってきたのなら
私は急いで迎えに行きます。
そして私達は再び寄り添い合うでしょう。

あなたに見せたいものがたくさんあります。
そう、とてもたくさんあります。
もう少しだけ待っていてください。
あなたが人生の旅路を終えた時、私達はまた出会えるのですから、、、

作者/Unknown
翻訳/チャーリー横山


RainbowBridge
RainbowBridge
天国のすぐ手前に「虹の橋」と呼ばれる所があります。

生前誰かにとても愛された動物達が、死後「虹の橋」へと旅立って行きます。
そこには広々とした草原と丘があり、仲間達はみな一緒に走り回ったりして遊んでいます。
たくさんの食ベ物と水もあり、暖かな日だまりの中、誰もが心地好く暮らしています。

生前病気にかかっていたり老いていた者は健康と活力を取り戻し、
傷を負っていた者は傷が消え、ふたたび健康な体を得ます。
まるで夢に見た「過ぎ去りし日々のあの頃」の姿です。
みんな幸せに満ち溢れています。
ある一つのことを除けば、、、
そう、とても大切なあなたを残して旅立って来てしまったことを寂しく思い、あなたのことが恋しいのです。

仲間達と一緒に遊んでいると、突然立ち止まり遠くの一点だけを見つめる者がいます。
そう、その時がやってきたのです。
一心になって見つめる瞳は輝き、その体は喜びに打ち震えます。
あなたを見つけたのです。
仲間から離れひとり駆け出し、草むらを飛び越えまっしぐら、駆けるスピードはどんどん増していきます、、、

そしてあなたを見つけ出し、ついにふたりは出会うことができました。
再び固い絆で結ばれ、もう決して離れることはありません。
あなたの顔は祝福のキスでびちゃびちゃです。
あなたは愛しい子の頭をなで、あなたへ向ける信頼のまなざしの瞳を再び見つめます。
ずいぶん長く離れて暮らしていましたが、決してあなたの心の中からは離れることはなかったのです。

そして今、伴に「虹の橋」を越えるのです。

作者/Unknown
翻訳/チャーリー横山


MothersPresent
SheltieChristmas!

ジェニーは、世界で一番美しい犬ではありませんでした。
彼女の耳はショードッグのように凛々しく立つことはなく、尻尾は若干高い位置にあり、ブリーダー泣かせの容姿でした。
しかし彼女の目は美しく、彼女自身の心を映し出しているかのようでした。

山あいの、水と緑の豊かな里でジェニーは育ちました。
早朝、森は朝焼けの太陽を受け、辺り一面に朝霧が立ちこめます。
夜には満天の星がジェニーの魂を揺さぶり、そして月に向かって放たれた彼女の遠吠が谷間にこだまします。
彼女の愛する少年と共に、それは最高の暮らしでした。

少年とジェニーは丘の上の草原で遊ぶのが大好きでした。
毎朝、丘の上まで競争です。
少年は生まれつきの心臓病で早く走ることができませんでしたが、ジェニーは少年の周りをクルクルと回りながら丘まで辿りつきます。
少年の足はもうパンパンで、息もあがりふらふらです。
丘へ着くと、笑いながら草むらに倒れこみ、天を仰ぎ、喘いで新鮮な空気をお腹一杯吸い込みました。
少年とジェニー・・・心自由な彼らは、その里でたくさんの夢を抱いていました。

ジェニーには、少年の靴がボロボロになっているのが、わかりませんでした。
少年の服が継ぎはぎだらけなのも、わかりませんでした。
食事の量が少なく少年が痩せこけているのも、もちろんわかりませんでした。
ジェニーにわかっていたのは、少年の優しい声、少年の情熱、少年の温かい手のぬくもり、そして少年が自分のことを愛してくれているということだけでした。
もちろん、ジェニーも世界中の誰よりも少年のことを愛していました。

この日もいつもと変わぬ一日が始まりました。
カップの底に注がれた、ほんの少しのココアとトースト、それがいつもの朝食です。

あっという間に平らげると、少年は歯のまわりに付いたトーストの残りかすを舐めまわし

「父さん、ごちそうさま!」
「お代わりある?」

そう父に尋ねました。

父は、使い古したカップに注いだお湯をひとすすりすると、ため息をつき窓の外の遠い山に目をやりました。
母さんからの贈り物だった父のカップは、かつて、とても美しかったのですが、今ではヒビが入り色あせています。

お代わりなどあるはずがないことを、父も少年もわかっていました。
少年は心の中で、お母さんが生きていた頃のことを思い出していました。

ジャムの載ったトーストにベーコンエッグ、たっぷりのバターに浸したふんわりポテト!
キッチンからはシナモンロールにパイが焼ける香りがしてきます。
キッチンをちらちら覗くのは、それは楽しいものでした。
母さんが微笑み、父さんはジョークを飛ばし、家中に笑い声がこだましていました・・・

「いいよ、父さん!」

少年はそう言うと、椅子を引いて壁に掛けてある帽子のところへと向かいました。
その椅子を引く音を聞いて、しわくちゃの毛布の上で休んでいたジェニーが立ち上がりました。

「今日はどこへ行くのだろう?」
「丘の上に登った後は、川のほとりへも行くのかな?」
「川原の石を拾い、冷たい川面にその石を放り滑らして遊ぶのかな?」
「今日も大笑いするのかな?」

ジェニーは少年が笑うのを見るのが大好きでした。

この日は少し天気が悪く、丘へ登る頃、小雨が降ってきました。
ジェニーと少年は慌てて家に戻りました。
するとテーブルの上に手紙が置いてありました。

「山の雪も溶けたようだ!」
「父さんは山に行ってみようと思う!」
「山へ行けば炭坑の仕事が貰えるかもしれない!」
「ここからは遠く離れた所なので、すぐには帰ってこれないが、弟のトニーとジェニー、そしてお家を頼む!」

父は炭鉱のある山へと仕事を探しに旅立ったようです。
少年は「父さんが帰って来るまで、お家を守らないと!」、そう心に言い聞かせて気を引き締めました。

少年とジェニーは、弟のトニーを気遣いながらお家を守りました。
父が旅立ってから3ヶ月が経ちましたが、父からは何の連絡もありません!
やがて、谷間に爽やかなそよ風が吹き、里は初夏を迎えました。
痩せた畑からは、ジャガイモとトウモロコシをほんの少し収穫することができました。
収穫は、トニーと少年、そしてジェニーも手伝い、丸一日かかりました。
ジャガイモは地下の倉庫に保管し、トウモロコシは乾燥させ、軒下に吊るしておきます。
これでしばらくの間、食事の心配はなさそうです。

ジェニーと少年は、相変わらず丘の上の草原まで毎朝競争です。
早朝の草原に吹く夏風は、とても爽やかでした。
時には弟のトニーもこの競争に加わり、少年達はいつもと変わらぬ楽しい毎日を過ごしました。

やがて、暑い夏も過ぎ、木々は色づき、秋を迎えました。
倉庫の食料は、もう底をつきそうです。
幸い山や森に行けば、キノコや木の実があります。
しかし、今年は夏が猛烈に暑かったせいか、木の実がほとんど見つかりません。
森の鳥やリス達が食べてしまったようです。

動物達は、食べ物を蓄えるために慌しく野山を駆け巡り、山や森もその姿を黄金色へと駆け足で変えていきました。

そして数週間後、秋も深まり里には谷間から北よりの冷たい風が吹き込むようになりました。
もう森には食べ物はありません。
森の動物達も冬仕度を済ませたようで、ほとんど姿が見えません。
少年は、もう3日も何も食べていません。
ジェニーも1週間、何も食べていません。
とうとう、幼い弟のトニーに食べさせるトウモロコシの粉で作ったパンもなくなってしまいました。
少年はゆっくり腰を下ろすと膝を抱え、思案しはじめました・・・
そうして暫くすると、何か決心したかのように大きくうなずき、立ち上がりました。

「ジェニー、さあ行こう!」

少年は、そう声をかけると、ジェニーを連れて家を飛び出しました。
少年とジェニーは昔よく通った川沿いの道を歩きました。
かつて沢山の七面鳥でにぎわっていた養鶏場には、もう一羽の姿もなくひっそり息を潜めています。
赤く熟した果実をたわわに実らせていたリンゴ畑も、ブドウ畑も、今はもう雑草で生い茂っています。
ジェニーは、少年のいつもと違う様子に気付いていました。
やがて川沿いの坂道を上りつめ、炭焼き小屋を越えたところに大きなお屋敷が見えてきました。
手入れの行き届いたお庭に、風格のある門構えの邸宅です。
奥からは客人を迎えるがごとく、重く威厳のある犬達の吠える声が聞こえてきます。

「ジェニー!、いいかい・・・」

ジェニーは耳を立て、少年の言葉を聞き取ろうとしましたが、首をかしげました。
最後の言葉まで聞き取ることができなかったようです。

「ファーガソンさんがお家に居てくれるといいんだがな〜」

そう少年はつぶやき、門の前で止まりました。

「さあジェニー!、耳をちゃんと立てるんだ!」
「尻尾は立てちゃダメだよ!、僕の行ったことを忘れるんじゃないよ!」

少年はジェニーの耳元でそう囁きました。
少年は帽子を脱ぎ、髪を手ぐしで整えると、大きく重圧のある木製の門扉を叩きました。
すると扉の奥から足音が聞こえてきました。
ジェニーは言われたとおり耳を立て、尻尾を下げました。

「そうだジェニー!、いいぞ!、お前はとても美人だよ!」

少年はドキドキしながら待ちました。

「はい、何のご用でしょうか?」

お手伝いさんがドアを開けながら尋ねました。

「あの・・・、あの・・・」

「どうしました、おぼっちゃん!」

お手伝いさんは鼻先にかかった細い金縁メガネを指で持ち上げながら尋ねました。

少年の心臓は、もう口から飛び出しそうです。
少年はジェニーに触れ、勇気を振り絞って言いました。

「ファーガソンさんにお願いがあるのですが・・・」

「ファーガソンさんに何の用?」
「旦那様は子供の相手をする程お暇な方ではないのよ!」

「仕事の話なんです、おばさん!」

少年の膝はガタガタ震えていました。

「仕事の話だって?」

お手伝いさんはあざ笑いました。

「仕事ってどんなものか教えてあげましょうか?」
「今夜はケネルクラブのパーティーがここであるのよ!、その準備で私は忙しいの!」
「コーヒー豆をひいて、ローストビーフを焼かないといけないし、パンやケーキも焼かないといけないわ!、ファーガソンさんも同じよ、みんな忙しいの!、あなたみたいに突っ立って一日中話しているわけには行かないわ!」

「でもおばさん、僕はファーガソンさんと仕事の話がしたいんです・・・」

「どんな仕事の話か知らないけど、あなたがファーガソンさんと会うべきお方かどうか、その格好、その犬を見れば私にもわかるわ!、さあ早くお家へ帰りなさい!」

そう言って、お手伝いさんはドアを閉めようとしました。
その時、お手伝いさんの後ろから、低く優しい呼び声が聞こえました。

「ルーシー?」
「どうかしたのかい?」

「いえ、何でもありません!」
「お忙しい旦那様の大切な時間を無駄にしてまいそうな客人だったので、今追い払おうとしていたところです」

「ルーシー、僕なら時間はたっぷりあるよ!、そこを退いて私に任せなさい!」

そう言ってファーガソン氏はドアを大きく開きました。

ミスター・トーマス・A・ファーガソン!
著名なブリーダーであり、ケネルクラブの会長でもあります。

ファーガソン氏は、少年に近寄ると

「私に何か用があるようだね?」

そう話しかけました。
そして少年の横に犬がいることに気がつきました。

「おや、そこに居るのは私の犬舎の犬だね?」
「私の犬舎以外ではこのような犬は生まれていないはずだ!」

そう言って、ファーガーソン氏はジェニーを自分の横にやさしく引き寄せました。

「はい、そうですファーガソンさん、この仔、いやジェニーはあなたの犬舎からきました」
「この仔の名前はセイント・ジェニー・オブ・ファーガソンです・・・」

「父犬はチャンピオンなんです」


少年は誇らしげに、そう付け加えました。

「あ〜、そのようだ、間違いない!」
「グランド・チャンピオン犬のグレート・サンダー・オブ・ファーガソンの仔だね?」
「見ればわかるよ!」
「さあ、早く入った、入った!」

そう言って、少年とジェニーを応接間に通しました。

「ルーシー!、温かい飲み物とトーストを何枚か焼いて持ってきてくれないか?」
「そしてこのジェニーにはドライ・ビスケットを頼むよ・・・」

今夜のパーティーの準備に追われているルーシーは不満げな顔をしています。

「さあ、早く行った、ルーシー!」

そうして、しばらく経ってからファーガソン氏は少年に尋ねました。

「ジェニーは、どうやって君の所にやってきたのかな?」

「母からのプレゼントなんです!」

「プレゼント?、ほう、それはちょっと特別なプレゼントだね?」

「はい、誕生日プレゼントに母がくれました!」

「あ〜!」

ファーガソン氏はうなずくと、昨年の暮れに財布の中身を気にしながら、新聞の広告に載せた仔犬を買いに来た病弱なご婦人のことを思い出しました。

「君の誕生日にだね?」

少年は静かにうなずきました。

「そうか!、お母さんは元気かい?」

そうファーガソン氏は少年に尋ねました。

少年の表情は急に暗くなり、目を落とすと小さな声で答えました。

「母は・・・、母は今年の春を迎える前に病気で亡くなりました!」

「う〜ん、そうだったのかい、それは大変だったね・・・、じゃ〜お父さんは?」

「父は、春の雪解けの後、遠くの山の炭鉱へ仕事を探しに行ったまま戻ってきません!」

「う〜ん、それは心配だね!」

そこへ、ルーシーが頼まれた温かい飲み物にトースト、そしてジェニーにドライ・ビスケットを持ってきました。

「ありがとう、ルーシー!」

「さあ食べなさい、ダニー!」
「君の名はダニー・ローズウッドだね?」
「お母さんが君のことを、よくお手伝いをしてくれる子だと、誇らしげに話していたよ!」
「そして、君のお父さんの名前はレスター・ローズウッドだったね!」
「君のお父さんは世界一素晴らしいバイオリン職人だよ!」
「君のお父さんの作るバイオリンの音は、それは美しい音色だった!」
「きっとお父さんは、もうすぐ帰ってくるよ、ダニー!」

少年の目はキラキラと輝きだし、トーストとココアに手を伸ばしました。
そしてファーガソン氏は、少年の継ぎはぎだらけのシャツとズボン、そして破れた靴に目をやりながら尋ねました。

「ところで、君がここへ来たのは、そのジェニーを私に見せるためだったのかい?」

少年は手を止め、下を向いたまま答えました。

「はい、あの〜、あの〜・・・、ジェニーを買ってくれる所をご存じないでしょうか?」
「ジェニーは、とても大切に育ててきました!」
「でも今は食べるのにも困ってお金がいるのです・・・」
「父さんが帰ってくるまでは何とか頑張らないと・・・」
「今、僕の手元に残っているのはジェニーだけなんです・・・」

「親愛なるダニーよ・・・君はもっと素晴らしいものを持ている!」
「それは希望だ、お父さんがきっと帰ってくると信じているね!」
「それに君の献身的な心、普通その若さでは得られないものだ!」
「現にジェニーを素晴らしい成犬に育て上げてくれたね!」
「今夜のケネルクラブのパーティーでジェニーをクラブのみんなに紹介しよう!」

「旦那様、しかし・・・」

お手伝いのルーシーが口を挟もうとしましたが、ファーガソン氏はすかさずルーシーの方に身体を向け

「ルーシー、ココアとトーストのお代わりを持ってきてくれないかね!」

そう優しく微笑むとウィンクして、口止めしました。

ファーガソン氏は、もう一度少年の方を向き、こう続けました。

「今日は素晴らしい日だ!」
「私に幸運を持ってきてくれてありがとうダニー!」
「君のおかげだよ、こんな素晴らしい犬を手にできるとは・・・」

少年は悲しげな顔でジェニーに目をやり、再びファーガソンさんの顔を見てこういいました。

「ファーガソンさん、それは・・・それはファーガソンさんがジェニーを買いたいということですか?」

ファーガソン氏は財布に手をやりながら答えました。

「もちろんだとも!」
「こんな素晴らしい犬を見て、”欲しくない!”というブリーダーはいないだろう!」
「でも、困ったな〜!」
「もうすぐ大きなドッグショーがあって、私は長い間犬舎を空けなければならないんだ・・・」

「そうだ!、ダニー、お願いがあるのだが・・・」

「私のためにジェニーを君のお家で預かってくれないだろうか?」
「君の犬の管理は素晴らしい、そうして貰えれば助かるのだけれど・・・」
「それに、もうすぐ仔犬が生まれてくる!」
「よければ、ジェニーと一緒にここへ来て、仔犬の世話もしてもらえれば助かるんだが・・・」

少年は二つ返事で承諾しました。
ジェニーの代金と世話料を貰い、食べ残したトーストとドライ・ビスケットを紙袋に詰め、大喜びで弟トニーの待つ我が家へと走って帰りました。
もちろん、ジェニーも一緒です。

それから一月が経ち、生まれてきた仔犬もだいぶ大きく育ちました。
この日はクリスマス・イヴだったので、仔犬に餌を与え終わると犬舎を離れ、家路へと急ぎました。
もう辺りは暗くなりかかっていましたが、川沿いの帰り道を下りきった所にある大きな樫の木の下で、ジェニーと少年は腰を下ろし一休みしました。
ちょうど、その樫の木の向こうに大きな煙突のあるお家が見えます。
煙突からは白い煙が昇っているのが見えます。
湯気で少し曇った窓の向こう側にお母さんと子供達の姿が見えます。
暖炉の横には、大きなクリスマス・ツリーも見えます。
七面鳥とパイを焼いているのでしょうか?
とても香ばしい美味しそうな匂いがしてきます。
そして、子供達とお母さんの笑い声が家の中から聞こえてきました。

少年は、凍えた両手に息を吹きかけながら、自分のお母さんが生きていた頃のことを思い出していました。
クリスマスには、家族みんな揃って食事をしました。
ローストビーフにロブスター、フライドポテトに温かいシチュー、テーブルには色々なご馳走が並びました。
食後には、大きなイチゴの載ったクリスマス・ケーキも食べました。
色とりどりに飾り付けられたツリーの下には、クリスマスプレゼントが置いてあり、暖炉の前でプレゼントを開けるのがとても楽しみでした。

そして暖炉を囲み、父さんの弾くギターに合わせて讃美歌「 What A Freind We Have in Jesus(慈しみ深き)! 」を皆で歌いました。
家中、歌声と笑い声が絶えることはありませんでした。
そして、父さんのバイオリンをバックに母さんがピアノで奏でる「 ダニー・ボーイ」を聞きながら、暖炉の前でいつの間にか眠ってしまうのでした・・・

少年の目から一粒の涙がこぼれ、それに応えるかのように夜空の一番星がキラリと光り輝きました。
その様子は、星になったお母さんが少年を見守っているかのようです。

ジェニーは涙を流す少年の姿を見て、後ろ足で立ち上がり少年の肩に前足を架け、少年の涙をひと舐すると、クンクンと泣きました。
少年はジェニーを強く抱きしめました。
するとジェニーは少年の顔を、涙が乾くまで幾度も幾度も舐め続けました。

「僕にはジェニーがいるんだね!、弟のトニーもいる、父さんももうすぐ帰ってくるよね!」

そうつぶやくと、少年は立ち上がり、幼い弟トニーの待つ我が家へと向いました。
寄り添いながら家路を急ぐ少年とジェニー!
星の煌めく夜空からは、雪が舞い降りてきました。
どうやら、今年もホワイト・クリスマスになりそうです。

凍りつくような夜空の下を歩く痩せこけた少年ダニー、そして被毛が擦り切れ、白い飾毛が黄ばんで見すぼらしいジェニー!
それでも、少年とジェニーの心はとても温かで、二人の愛情に変わりはありませんでした。
少年は、雪の舞い散る夜空の星を見上げて囁きました。

「素敵な贈り物をありがとう、メリー・クリスマスお母さん!」

舞い散る雪はだんだん多くなり、地面を覆い尽くすほどになってきました。
そして、ジェニーの肩にも雪が降り積もり、黄ばんだ飾毛は、まるで手入れの行き届いたチャンピオン犬のように真っ白です。

セイント・ジェニー・オブ・ファーガソン!、彼女こそが本物のチャンピオン犬なのかも知れません・・・

作者/チャーリー横山


ドッグ・ストーリー「母からの贈り物」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆様が、いつまでもお幸せでありますように、心からお祈りいたしております。

メーリー・クリスマス!
   チャーリー横山
    2010年12月
WishVeryMerryChristmas!







Charlie Yokoyama


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